静かなレコードブーム

 コードが全盛だった時代、今のCDよりはるかに多い種類の音楽レコードが発売されていました。欲しいレコードは小遣いがいくらあっても足りないくらいでした。今CDショップに行ってもクラシック、映画音楽やジャズなどは魅力あるCDが少ないことに不満があります。CDの売り上げはここ数年低迷しています。不法コピーが増えたためという意見もありますが果たしてそうでしょうか。私は魅力あるCDが少ないのが原因だと思っています。中古レコード店が増えているのはそんなことが要因になっているのかも知れません。リサイクルショップでも中古レコードの売れ行きは好調のようです。

 楽ファンは誰でも「この1枚」というレコードを何枚か持っていました。ストコフスキーの「新世界」、ズービンメータの「ツァラツーストラ・・」、ヘンリーマンシーニの「ムーンリバー」、マイルスの「プラグドニッケルライブ」、シナトラの「酒・バラ」などが私のお気に入りでした。これらがCD化されて販売されたかどうかはわかりませんが、手に入ったのはシナトラだけでした。これらのレコードをCDR化して聴いてみると音質、周波数特性などまったくCDにヒケをとらないどころか、むしろ音楽性豊かな音を響かせていることがよくわかります。
 コード1枚を作るには大変な労力、技術、人やお金がかかっています。演奏者(ミュージシャン)の力の入れようも大変なものでした。音だけではなくこれらのエッセンスが1枚のレコードに集約記録されているのです。

 CD全盛の時代になってレコードプレイヤーは家庭から徐々に姿を消しました。自然の成り行きでしょう。ただ、プレイヤーが残っていても現在は接続できないオーディオ装置が多いのも事実です。そのため最近ではCDラジカセなどでも手軽にレコードが楽しめるアダプターが発売されています。レコードはRIAAという高域を強調した特性で録音されているため、再生時にこれを補正してやる必要があり、またプレイヤーの出力は微弱な信号のため適度に増幅してやることも必要です。これらの機能を搭載したレコード専用のアダプターはCDラジカセなどAUXという外部入力端子を持っている装置であれば簡単につなぐことができます。こんなアダプターが大手メーカーから発売されるあたり、またレコードを聞いてみたい音楽ファンが増えている証拠でしょう。或いは冒頭に書いたように音楽ソースがプアな現状を反映しているのかも知れません。

 と、まぁ現在こんな背景があり静かなレコードブームになっていると思っている次第です。

 遠のテーマ いい音とは・・・
 CDを始めて聞いたとき、あっ、アナログレコードの時代は終わったなと思いました。急峻な立ち上がりのサウンド、バックノイズのないどこまでもクリアなサウンド、この新しい音源に対する強烈な印象でした。それからはCDが自然に増えていきました。何年か経って、古いレコードのジャケットを見ていて、ふと聞いてみたくなり、かけてみるとやはりプチプチ音はあります。しかし聞いているうちに不思議に気にならなくなっていました。レコードも捨てたもんではないな。懐かしいので次のジャケットも聞いてみよう。こうしてまたレコードも聞くようになりました。結果的にレコードはCDより長時間聞いても飽きないという経験をしています。
 最近NHKテレビを見ていたら、単音の高周波音で若者を不快な気分にさせるという話のなかで、高周波音が広く分布してるサーという雑音は逆に脳がα(アルファー)波を多く出して人をいい気持ち、さわやかな気分にするという話です。アナログレコードの方が音がいいと感じるのはひょっとしたらこのサ−というノイズのせいかも知れないというのです。ここでいう高周波音とは人間の可聴領域(16〜20,000ヘルツ)の高い部分の音のことで無線などの高周波とは意味が異なります。
 私は今でもモニターに昔の真空管アンプを使っています。専門的になりますが電気アンプは負帰還という手法で歪(ひず)みや雑音、周波数特性を電気的に改善する方法が一般的に採用されています。私はわざとこの負帰還を外した無帰還アンプを昔から好んで使っています。「音が自然に聞こえる」というのが永く使っている理由のひとつです。無帰還によって電気的特性を悪くしている筈の高調波雑音が実は脳からα波が多く出て気分をよくし、「音が自然に聞こえる」ように感じるのではないか、先のNHKの番組はこんな疑問を私に持たらしました。何故、電気的特性の悪いアンプの方がより「音が自然に聞こえる」のか、これはまだまだ私の永遠の疑問(テーマ)なのです。

 
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