『降り懸る火の粉』の元

 平カズオさんが主催されていた「写真人電脳網」というBBSでこの論争が話題になったことがあります。この火種の元になったアサヒカメラ1936年号の記事に関連する記述がありました(以下原文のまゝ)。


  24. T.KUBO       91/05/02 15:41   10078  ライカVSコンタックス

クラカメ専科 299/299
Subject: 『降り懸る火の粉』の元
Name   : ********
Date   : 4:20 pm  Sun Apr 21, 1991
(170 lines)

ホーゲンさん、X−PDSさんより、頂いた『降り懸る火の粉は拂はねばならぬ』がシ
ュミット社より出る事に成った原因の記事がアサヒカメラの昭和10年(1935年)8月
号『ライカとコンタックスとどちらが良いか』(著者K・K・K氏)と言うのは周知の
事実なのですが、この『ライカとコンタックスとどちらが良いか』の記事は、さすがの
ホーゲンさんもアップされていないので、手元の雑誌に一部載っていましたので、以下
に引用してみました。ただ、全文では無く一部だけなので御了承下さい。
(旧字・旧カナ使いのものを、新字・新カナ使いに改めてあります。)

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 自分は最初にライカA型を買い、次にコンタックスの発売当時のものを求め、これを
ライカのD型に取替え、次にライカの III型を購い、次にコンタックスの最近型を求め、
現在ではこのコンタックスとライカ IIIA型の双方を使っている。そしてライカとコン
タックスの双方とも付属レンズの総てを使った経験がある。この歴史を顧るとライカ党
でもなくコンタックス党でもない、そしてカメラ道楽ではないから、かなり多数を写し、
この点決して平均点てはないと自信している。
 
 ライカと一口にいうとあらゆる型を含むが、A、B、C、Dの各型は、揺籃期もしく
は改良の中途を代表する製品であるし、スタンダード型は低廉を目標とした特殊品であ
って、これらの性能は今日のライカを代表する III型や IIIA型に比べると、著しく劣
っているため、ここに使うライカという言葉にはこれらを含まないことにしておく。コ
ンタックスの旧型もまた同様である。
 
 優劣を漠然と批評すると程度の明瞭を欠くため、性能その他の要点を12項目に区別
し優れている方を100点とし、採点方によって優劣を比較する途を選んだ。
 
◇外観美      ライカ    100点
          コンタックス  85点
 ライカは旧ベスト・コダックに基本の形を採った旧い形であるが、コンタックスは近
代向の角型を採用したモダン型であるとドイツ雑誌の泥試合記事に書いてあったと記憶
している。
 コンタックスは決して醜い姿ではないが実用的に重きを置きすぎて、外観美を犠牲に
している傾がある。
 ライカはクローム型があり、確かに美しい。ある人はコンタックスには男性的な美し
さがあり、ライカには女性的の美しさがあると云っていたが、当らずともいえど遠から
ずであるらしい。
 
◇容積と重量    ライカ    100点
          コンタックス  70点
 左右の四ツ角に丸味をもたせると大層小さく見える。こればかりでなく、ライカのズ
マールには沈鏡胴もあるが、コンタックスのゾナーはF2もF1.5も固定鏡胴である
から、容積は一層大きくなる。
 コンタックスは実用値に重きを置き過ぎたのか、それとも必要上致方がないのか、こ
の点不明であるが、重量が重くなっている。
 必要であるか否やは別問題、吾々は携帯する関係上なるべく小さく、なるべく軽いこ
とを要求する。
 
◇堅牢度      ライカ     65点
          コンタックス 100点
 ライカ III型はA型などに比べるとボディー外側の板金の厚さが遥かに厚くなってい
るが、コンタックスのキャスト・メタルの堅牢度に比べると遥かに及ばない。焦点距離
の長いレンズを付けたとき、コンタックスの堅牢度はなるほどとうなづかせる。
 
◇レンズ      ライカ     75点
          コンタックス 100点
 5cmF3.5のエルマーとテッサーを比べると、エルマーは中央部においてやや勝
り四隅部においてやや劣る。黄、緑、赤色のフィルターをかけるとエルマーの結像力は
低下する傾きがある。絞りを小さくして結像力がよくなる共通性状ではテッサーの方が
優っている。
 5cmF2のズマールとゾナーを比較すると、ズマールには沈鏡胴があり容積を小さ
くする利点がある。しかし空気境界面の8つあることは、夜間撮影に多く遭遇する画面
内に明るい光源を包括する場合、虚像の被害を蒙りやすい欠点がるし、絞りの構造に窮
策があり、小絞りとしたとき回折の現象に基く被害を受けやすい。
 7.3cmF1.9のヘクトールと8.5cmF2のゾナーを比較すると、前者は明
るさと比較的軽い点で優り、後者は焦点距離の長いことと結像力のよろしい点で優って
いる。ただしヘクトールの開放口径における描写はソフト気味を帯び、ポートレート用
として特別な味をもっているいう批評もあり、一概に劣ると断定を下せない。しかし、
光学的に吟味すると、ヘクトールには欠点の残留多くゾナーが完全に近い性状をもって
いる。
 コンタックスの方には焦点距離5cm明るさF1.5という明るいレンズがあり、こ
れが現在では小型カメラ用レンズ中最も明るいレンズである。但し開放口径ではF2の
ゾナーより幾分劣るという噂がある。しかし実際に使ってみると、明るいから甘いだろ
うという予想を裏切り、意外の鮮鋭に感心した場合があった。
 焦点距離13.5cmのレンズを比較してもコンタックスの方が良質であり、焦点距
離30〜50cmの望遠レンズがあることもコンタックスの長所である。しかし、焦点
距離2.8cmの広角レンズを挿入したとき、距離計と連動しないばかりでなく、距離
計そのものまで動かなくなるのは重大なる欠点であり改良を要する事柄である。
 
◇シャッター    ライカ     60点
          コンタックス 100点
 ライカのシャッターが寒さの影響を受けて動作が不正確になったり、動かなくなった
実例は耳にタコと申してよいくらい。またシャッターに基く左右の感光がムラになるの
も公然の秘密、ライカのシャッターには重大な欠点がある。 IIIA型には1/1000秒を追
加したが、根本的の改良を加えたのではなく、単に追加したに過ぎないらしく、ムラは
完全に現れる。簡単は結構であるが、あの簡単な構造では、バランスの均等な場合だけ
しか完全でなく、この完全には永久性が乏しい。
 シャッター速度をチャージしない前に合せられないのも一つの欠点であるし、シャッ
ター速度目盛盤がシャッターの動作で戻ることも欠点である。コンタックスのシャッタ
ーは速度の変更が少しく面倒であり、殊に暗いときには赤字が読みにくい。白字と赤字
を逆にして欲しい。またシャッターをかけ、フィルムを巻上げに時間がかかり連写速度
を遅くする欠点がある。
 コンタックスは巧妙なる工作により金属フォーカルプレーンを採用しているが、果し
てよいか否かに疑いを抱いていた。にもかかわらず、今日までの様子ではシャッターに
ほとんど故障が無いらしい。ただし、シャッターのムラは絶無でなく、縦位置で写せば
現れる場合もある。
 シャッター速度の正確と能率のよい点では、コンタックスがはるかに優っている。
 緩速度のときの動作は静かで震動の伴わないことを要求する。この点でもコンタック
スの方へ軍配が上がる。ただし鼠のキッスのような音の伴うのはどうかと思う。
 
◇距離計      ライカ     85点
          コンタックス 100点
 初期のコンタックスに付属していた距離計はダラシのないものであったが、プリズム
式に改良されて以来申し分のない完全なものとなり、狂う場合がほとんど無い。ライカ
は距離計をあとから取入れたため、基線を短くするのやむなき窮地に陥り、これによる
精度の欠点を補うため拡大用補助レンズを付けた。近距離の被写体の場合はライカの方
が合せやすいが、長焦点距離のレンズを使うときになると、コンタックスの距離計が優
る。
 基線長の長さライカは38ミリ、コンタックスは93ミリ。長いからとて精度がわる
くては正確でないが、精度が両者間に甲乙なき現状では、長い方が優るのは致し方ない。
またその構造状、ライカには故障を招きやすいが、コンタックスの方ははるかに大丈夫。
 距離計は正確でも、レンズとの連結に欠陥があっては駄目、しかしこの点まず五分五
分らしい。
 
◇ファインダー   ライカ     95点
          コンタックス 100点
 精密高級の特殊ファインダーを発売している点ではコンタックスが断然優っている。
しかし、値段が安くないからなかなか買い集められない。標準の5cm用ファインダー
は両者ともカメラに付属しているが、このファインダーの質はライカの方が優っている。
コンタックスの方は視野が心持広過ぎるし、歪曲の欠点があり、ファインダーの位置が
カメラの端にあるため、近距離の物体を撮るときパララックスが著しくなる。
 
◇フィルムの装填  ライカ     90点
          コンタックス 100点
 ボディが割れない旧ベスト型の構造はライカの重大欠点、フィルムの装填、フィルム
の正確なる姿勢に不満を伴う。コンタックスは巻返さないことを望めば直に出来るが、
ライカは不可能、途中でフィルムの故障にあうとか、終尾が抜けたときなど、ライカに
は不愉快を抱く場合があり、これが失敗の原因になる。コンタックスのマガジンは改良
され、ライカよりも使い良く、具合の悪くなるおそれもないらしい。
 要するにこの点、あとから産れただけにあらゆるところでコンタックスはライカの欠
点を補っていると見受ける。
 
◇精密度と確実性  ライカ     90点
          コンタックス 100点
 精密度は両者間に甲乙の差がない。しかし動作の確実性においてはコンタックスの方
が優っている。ライカにはシャッターに関係する不安が伴う傾があり、何となく安心の
できないところがある。
 
◇取扱いの便否   ライカ    100点
          コンタックス 100点
 焦点の合せ方、レンズの交換、その他あらゆる場合の取扱いを比較すると、そのカメ
ラに馴れさえすればほとんど同格、この点差等を付けるだけの差異がない。とやかくの
批判は十分に馴れないのに原因するらしい。
 
◇付随事項     ライカ     80点
          コンタックス 100点
 乾板使用可能の点でコンタックスは優る。二重、三重撮影も容易である。三脚用孔の
中央部にあるのもよく、特殊金属によって机上に安置可能である。手袋をはめたままで
扱うことができる。レリーズは有合せのものが使える。カメラ内部にたまるゴミは意外
に多いが、これの掃除は可能である。速写ケースの蓋が邪魔をしない……等々はコンタ
ックスの長所である。双眼写真を写せる、付属フィルターの平行平面が完全である、フ
ィルターをかけてもレンズキャップをかけられる……等々はライカの長所である。
 
◇値段       ライカ    100点
           コンタックス  80点
 実質の優劣はともかくとして、表面的の同格品を比較すると、ライカの方が安い。新
型コンタックスには中古品がほとんど無い、にもかかわらずライカには中古品が多い。
だから、もし中古品でよいなら一層安く手に入る。この点ライカはコンタックスに優っ
ている。そいて、これが実際問題としてすこぶる重大な事柄である。
 
 12項に分別して採点すると以上の通り、ただしこの採点、絶対的に正しいものでは
なく、各項の重要性は人々によって異なる。したがって、このままを累計した平均点が
真の正しい答ではない。若干の手加減を施した答が最も正確に近い答であろう。
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