ライカメンテ体験記
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クリスティーズのライカM6 私は最近、クリスティーズのオークションに参加しました。ライカM6にターゲットを絞り、現行品でもあるのでリーゾナブルな価格でファックスしてみました。運よく私に落ちましたので送金手続きを済ませました。
送られてきたM6は何処と言って悪いところはなく安心しましたが、シャッター音が少し高いというか、M型ライカにしては金属的な響きかな、というのが第一印象でした。2,3本撮ってみましたが全く問題はありません。しかし、前のオーナーのことやどんな使われ方をしたかもわからないのが気になりオーバーホールに出すことにしました。他にもライカを所有していますがみんな完調で私の気分をよくしています。気になり出すと止まらないのが私の性分です。人形町のSさんに相談すると「日暮里がいゝョ」とのことでした。写真はよく撮る方ですがライカは主に子供のスナップに使っています。
さて、広告にあるとおり日暮里でおりて見回すとそのライカ修理専門の会社は直ぐ目の前のビルにありました。思ったより小さなビルでした。
エレベータを5Fでおりて入ってみると、ライカやレンズの入った陳列ケース、応接セットと受付デスクがあり、作業場と思われる奥の方は全てガラス張りで大変クリーンな印象を受けました。写真でみたことのあるx田さんが奥の方から出てきました。ビシッとしたスーツ姿でした。
事情を話すと、M6は故障がないのなら素人が4,5年使ったくらいではオーバーホールの必要は先ずないといわれました。私のM6を慣れた手つきで数回シャッターを切って、このままでも問題ないとのことでした。私の性分のことは話しませんでしたが、引き受けてくれそうもないので、とにかく強引に頼みました。目に見える故障や不具合が無い限りここでは引き受けないんだ、商売熱心ではないなぁとも思いました。
一週間ほどして、ライカが上がったこと、費用がいくらという連絡をもらいました。翌日仕事の帰りに寄りました。銀座のカメラ屋さんに頼んだときの倍くらいの値段でした。安くはないなとは思いましたが、受け取ったM6のシャッターを押してみてその思いは氷解しました。「ん?」、どう表現していいかわかりませんが最初に私の口から出た言葉です。新品ライカを買ったことがない私には、ライカとはこうも動きが軽快なんだと目から鱗(うろこ)が剥がれる思いでした。各部操作の感触がまるでオーバーホール前とは違うのです。
帰りの電車の中で、少し気恥ずかしい気もしましたが何度かシャッターを押しながら、他にも何台か持っているライカのオーバーホール予算のことで頭がいっぱいになっていました。(1993年)
65年前のライカのOH
3年前にライカD3を買いました。それまで散歩カメラとして10年以上使っていたIIIcの調子が思わしくないのでOHすることを考えていた矢先に、秋の伊勢丹の中古市が始まりました。D3を衝動買いしたのはそのコンパクトさに負けてしまったからです。また黒塗りのボディには所々綺麗な真鍮が出ていてかなり使い込んだライカのようで値段が安かったのも動機の一つでした。ボディ番号から1934年の製品です。
その冬、スローシャッターが少し鈍っていることに気づき、買った店に相談したら、保証期間なので費用は無料だが、修理に1、2ヶ月かゝると言われました。このライカD3は購入以来私のお気に入りになっていて殆ど毎週使っているので2ヶ月は長過ぎます。スローは先ず使わないので、修理に出すこともなくそのまゝになっていました。酷使することもあってか次の年の冬にはスローの鈍りはなくなっていました。
このD3にはニッケルエルマーが付きっぱなしです。このレンズにガタが出てきてOHすることを考えていました。日暮里の彼の社に相談したら2週間で上がると言います。それならと、ついでにD3のボディもOHすることにしました。数年前にM3やM6のOHを頼んだことがあるので仕事の確かなことはよく知っています。
出向いてx田さんに見せたところ「ボディは何の問題もない」と引き受けてくれません。「レンズはもうダメ、もっと早くもってこなくては」、といゝながらレンズは引き受けるといゝます。せっかくの機会だからボディもとしつこくにお願いしました。やれやれ、またか。x田さんはユーザーの為を思ってか明らかに悪いところがないとなかなかOHは引き受けてくれません。
OHの済んだライカD3は私の満足できる結果であったことは言うまでもありません。シャッター音も見違えるほど軽快になっていました。修理票によれば2,3細かな部品の交換があったようです。「OHしても変わらないと聞いたけど、全然ちがうじゃないですか」と一言文句ともつかぬ言葉を吐いたら、「そーすかぁ」、それでお終い。
常用しているカメラなのでOH前の各部の感触はよく覚えています。家に帰ってさらに細かくチェックしてみたら、まず距離計の二重像が実にくっきりしている、そういえばビューファインダーの透明度も増している、アレー、どうしても取れなかったLeicaという銀象嵌文字の横の頑固な汚れも落ちている、巻き上げノブは本来こんなに軽いもんなんだ、などなど新品を知らない私には驚くことばかりでした。65年前、このD3を買った人はこういう軽快なタッチで写真を撮っていたのか、不思議に羨ましい気にもなりました。
一方エルマーレンズの方は、鏡胴のガタがなくなり、絞りとヘリコイドの回転は実にスムーズです、かゝりの甘かった無限遠ストッパーも直っている、レンズの透明さも増している・・・、など昭和7年のレンズとは思えない動きをするようになりました。「レンズはもうダメ、もっと早くもってこなくては」、あれはどういう意味だったのか。その後好んで逆光のショットを撮ってみましたがかなりまともに写ります。このレンズは十数年前に格安で買ったのですが、当初のテストでは逆光が酷く、以来逆光のショットは避けていました。
ライカは私にとっては必要な散歩カメラです。65年前のカメラでも「正規のメンテナンスを受けている」という思いがライカへの信頼と写真に対する自信を持たせてくれる、そんな私のライカD3のオーバーホールでした。(1998年12月)
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