ライカ M3の魅力



Lens Photo  こゝに昭和7年(1932)頃に作られたエルマー5cmF3.5というレンズがある。
 昭和7年頃といえば、日本ではわずかなカメラメーカーが欧州の蛇腹カメラをまねていた時代である。エルマー5cmは大正13年にライカ1型用として登場し、以後37年間ライカの標準レンズとして君臨した名レンズである。当時、まだクロームメッキの技術はなくレンズの鏡胴はニッケルで作られている。

 このニッケルはまだ美しい光を放っている。戦前のレンズなのでコーティングはなくガラスの表面に色はついていない。

 製造されて60年余を経たこのエルマーは今でも現行モデルのM6ライカに付けて撮影することができる。エルマーに限らずライカのほとんどの交換レンズはM型ライカに付けて撮影することができる。



Lens Photo  写してみても今のレンズのように変にカリカリすることもなく、それでいてたいへんシャープな描写をしてくれる。カラーの逆光はさすがに苦しいが、普通の撮影では立派に現在のレンズと対抗し得る性能をもっている。

 この4半世紀の間に作られたすべてのライカは今でも立派に機能を果たす。オーバーホールなどのメンテが可能なのである。当時カメラは”一生もの”といわれたそうだがライカがそれを証明している。10年前に大枚をはたいて買ったレンズが使えないというのが当たり前の現在、半年に一台の新製品を発売するメーカーも珍しくない。少し旧式のカメラでは部品のストックのないものも多く、壊れたら買い替えるのが当たり前になってしまった。もっとも高性能のカメラを低価格で買える時代を否定するわけにもいかないし、今はそれが当たり前の時代でもある。

 ライカは誕生以来そのボディに固有の連番がふられ、しっかり管理されていてライカ年表として残っているし、そのまゝ現在も続いている。同じボディ番号のライカは存在しないし、その番号から作られた年代が確定できるのも他のカメラにない特徴である。

 ライカのレンズには優れたものが多い。バルナック(旧型)時代のエルマーやM型時代のズミクロンは評判通りのレンズである。ワイドにも優秀なレンズが揃っているが、中でもズマロン35mmF3.5は比較的安価でカラー撮影に威力を発揮する。テレ側は何といってもエルマー9cmだろう。製造本数も多く安価で軽量なのがその理由である。135mmはファインダー視野内のフレームが小さくレンジファインダーには向かない。このクラスのレンズは一眼レフに任せるのが懸命な選択だ。

 戦後日本のカメラ産業はライカのコピーから始まった。そのためライカマウントのレンズが数多くつくられ、中には優れたレンズも存在する。これらのレンズの味を賞味するのもライカオーナーの楽しみのひとつである。キャノン25mmF3.5、100mmF3.5、ニッコール35mmF2.5、105mmF2.5それに50mmF1.4はその代表である。

 ライカの魅力はなんと言っても精密、堅牢、軽量のボディにつきる。加えて古いレンズの味を楽しんだり、最新のレンズを装着してヌケのよい印画を楽しむこともできる。F2やF1.4によるノーフラッシュ撮影も今の中級機では及ばない。

 ライカ使いの写真家として知られる木村伊兵衛さんは数あるライカの中で特にM3を好んで使ったと言われる。