パイプスモーカーといえばルー・タバキンさんが有名で、サックスをくわえていないときはいつもパイプを、というのが定説だった。私の持っている古いレコードのジャケットにもパイプをふかしている姿が載っている。先日ルーさんがさくらんぼに出演したときに聞いてみたら、もう20年も前にパイプはやめて以来シガー(葉巻)を吸っているそうだ、理由は手入れ(清掃)が面倒だから。パイプをふかしながら雑談をしているときルーさんは確かに葉巻をスパスパやっていた。写真は「宮間利之とニューハード」と競演したダイレクトカッティングのレコード「VINTAGE」のジャケットから借用。
日比谷公会堂のサマージャズフェスティバルでクラリネットの北村英司さんが喫煙所でパイプをふかしていた。この日はニューハードとの競演だった。北村さんは何十年来のパイプ党、葉っぱのプランドはボルクム△△△、私の吸っているハーフ&ハーフは少こしきついとさすがによくご存知だった。側にいたマネージャー嬢が「さっき吸ってらっしゃいましたね」、喫煙者の少なくなった現在、さらにパイプ党は極端に少ないので目立ってしまうようだ。
同じ会場でニューハードのバリトンサックス奏者大野憲一郎さんもパイプ党であることを知った。高価なパイプの底に穴をあけてしまった話、葉っぱの話などパイプ談義はつきなかった。今もパイプを続けているそうだ。
昔、デキシーキングスは全員パイプ党だった。ある日、楽屋で皆んながやっていたら火災報知器が鳴り出して大騒ぎになった、とはドラム奏者で現リーダー楠堂浩己さんの話。 デキーシーキングスといえばリーダー薗田憲一さんが昨2006年に亡くなった、残念でならない。息子さんの市川勉慶(いちかわ・べんけい)が後を引き継いでトロンボーンを吹いている。勉慶氏いわく、昔はオヤジもよくパイプを喫っていた、葉っぱには必ずブランデーをかけていた、パイプスモーカーを見ると懐かしく思い出す。薗田憲一さんは相当なパイプ通だったようだ。
さくらんぼに出演したオランダのバート・ファン・リール氏、トロンボーンの巨匠で今回(2005年9月)初来日。 氏とはメールで打ち合わせをしていたこともあって、パイプをくわえながら初対面の握手となった。あらっ、バートさんもパイプをくわえている。早速パイプ談義に入ってしまう。こういう時、一本のパイプは旧知の仲のような効果を生み出すから不思議だ。バートさんは早速ポーチを出してさかんに吸ってみろと勧めてくれる。ポーチとは、タバコの葉っぱを入れる携帯用の皮袋のこと。せっかくだから一服頂いて吸ってみると味はマイルド、かなり高級感漂う香りだった。タバコの缶を見せてくれたが知らないブランドだった。一服といってもパイプの一服は30分くらいはもつので十分高級ブランドの味を楽しむことができた。氏はいつもパイプは2本持ち歩き交互に吸っているそうだ。シガレットはトロンボーンのブレスによくないので代わりにパイプをやっているとのこと。
この巨匠のバートさん、今年も(2007年9月)さくらんぼにやってきた。2年ぶりだ。目を合わすなりいきなりの抱擁、私がパイプ野郎ということを覚えていた。またすぐにパイプ談義になる。今回も勧められるまま、お馴染みのポーチから一服もらってあの高級ブランドの香りを懐かしく楽しませてもらった。一部が終わって出てきたバートさん、パイプを加える前に自分の唇を差して、リハの後で食べたカレーのスパイスで唇が固まって演奏には苦労したと話していた。(Sept 2007)
ニューハードのリーダー宮間利之さんは、私が行くと楽屋でも事務所でも必ず灰皿を用意してくれる。私がヘビースモーカーであることを知っているからだ。宮間さんももちろん愛煙家である。私が宮間さんの前で初めてパイプを取り出したとき、「昔はよくやったよ、今はこれ(セブンスター)だけどね」と私のパイプスモーキングにも理解を示してくれた。今は喫煙のできる場所が少ないので、外出先ではあまり吸わないが、宮間さんを訪ねるときはホッとする。
さくらんぼのパイプスモーカー
一方、さくらんぼ常連のパイプ党は某私大教授のOさん、もと商社役員のIさんが有名である。お二人とも何十年のベテランでパイプスモーカーの貫禄がにじみ出ている。私はといえば30年くらい前にヨーロッパの免税店で買ったダンヒルを真似事でやっていたくらいで、日曜の午後など暇なときに我流で吸うパイプは辛いだけで半年ほどで止めてしまった。最近、上記Oさんに強引に弟子入りしてパイプスモーカーに変身した。いろいろパイプのノウハウなどを教えて頂き、おぼろげながらもパイプの味がわかってきた。パイプの構造は単純だが、味わいには奥の深いものがある。パイプそのものの値段はピンからキリで高いものは20万円以上もするが、私はヤフオクで買った1,000円くらいの安もので楽しんでいる。
パイプタバコは入手難
昔デパートには必ず喫煙具売り場があり、普通のタバコ屋さんでもパイプタバコを置いていたのでパイプを始めても苦労はなかった。今は広い東京でもパイプタバコを扱っている店は少ない。ネット通販で入手できるのが救いだが送料がネックになる。私もはじめは通販に頼っていたが、あるときIさんの話でわが街(調布)にもパイプタバコを扱っている店のあることを知った。それも柴崎、さくらんぼの近くである。なんとラッキーなことか。これでもうシガレットに戻ることはないだろうとひそかに思っている。June 2005 T.Kubo
パイプも進化?
タバコといえば両切りのピース、しかし喫っている人は少ない。ほとんどのタバコにフィルターがついて有害なタールや水分をとってくれる、いわゆるマイルド喫煙が主流になってきたからだ。パイプの構造は火皿の底からマウスピースを通して煙を喫う非常に単純なものであるが、クールに喫うためにいろんな工夫が見られる。パイプの中には小さな穴の開いた金属棒が入っているものが多い。煙の温度を下げ、タールや水分を蒸着させる効果があり金属フィルターと呼ばれている。最近ではこの金属フィルターの代わりにチャコール(炭の粉)フィルターを装着するパイプが流行っている。このフィルターは消耗品で、メーカーのパンフには一服するごとに取り替えるのがベターとある。一服とはパイプ一詰のことでシガレットのそれとは少し違うが、経済的な理由からそう簡単にメーカーの言いなりにはならない。一日に一個くらいのペースで交換しているが十分クールな味を保っている。
また、写真でもおわかりのようにマウスピースにも進歩が見られる。硬質ゴム、硬質プラスチックなどで作られていたものが、最近ではほとんどがエポキシ系合成樹脂にかわっている。吸い口の部分はビットと呼ばれるが、この部分が変色に強くなり、傷も付きにくくなった。
ブライヤー(パイプの材料の木の名前)製パイプが主流になって200年、ここにきてほんの少し進化してきたようだ。
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